• 雲の上の町 ゆすはら ─高知県梼原町─

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森の中のまるごと図書館づくり「第4回:木の時代がふたたび!」

2016年09月01日

さわやかな風を感じる今日この頃になりました。はじめての梼原の夏を無事過ごすことができました。8月はイベントが盛りだくさんでしたが、高原祭り、越知面夏祭り、協働の森フォーラムに参加しました。特に、協働の森フォーラムでは、図書館の設計をしてくださっている、隈研吾さんの講演を聞きました。隈さんから直接、梼原とのかかわりを話してもらえたことで、梼原の図書館と地域づくりへの理解がより一層深まりました。


「梼原の木を全面的に使ってほしい」と前々町長が依頼してできた「雲の上のホテル(1994年)」に続き、この町に一連の隈研吾建築ができることになりました。隈さんの建築は、建物の存在感をできるだけ消すために、「自然に溶けた柔らかい建築」をテーマとしています。粒子のように小さい単位の空間がたくさん集まることによって、軽やかながらしなやかに強くなります。日本人が昔から伝統建築において採用してきた賢い方法です。大型建築でも、小さな部材構成で作ると建物がやさしく人に近くなるので「小さな建築」を追い求めて来たのです。人間という動物の「巣」として建築を考えると、地震や台風から守ることができれば、「巣」を守るのはコンクリートのような硬い重いものではなくて、軽く柔らかなものでよいのです。


4travel.jp

みなさんもご存じの、雲の上ホテルの外観です。


(画像は4travel.jpより)


日本建築において、木を用いるのは伝統的な手法でした。ところが、近代に入って耐災害が建物の基準に盛り込まれるようになって、木造設計はやりにくくなっていた時期があったのです。ただ、自然への回帰が近年注目を浴びるようになったことで、建築の法制度も技術も、強度の問題もクリアした上で、木材を使いやすいようにイノベーションが進み、ようやく公共の建物でも木造建築ができるようになったそうです。そのため、「梼原・木橋ミュージアム(2010年)」の木組みが可能になり、鉄と木のハイブリッド構造で木を重ねた美しい橋となりました。「刎橋(はねばし)」「斗栱(ときょう)」という伝統技術で、釘を一本も使わずに建てられました。橋という大きな建物なのに小さな木を組み上げて作られているため、不思議と威圧感を感じない「人間のスケール」に近い建物になっています。


隈研吾建築都市設計事務所

雲の上ホテルに隣接する、木橋ミュージアムです。


(画像は隈研吾建築都市設計事務所より)


梼原の木を使うというこの原則は、現在進行中の「ゆすはら森の中のまるごと図書館・ゆすはら複合福祉施設」の設計思想にも通じており、同じように、自然と調和する有機的な建築を目指しています。木で作られた家や木のある風景は、人間にとっては精神安定作用があり、見ても香りによっても癒しの効果があります。そればかりか、人が定期的に山仕事をすることにより、地域の森林環境を守り、経済全体が元気になってくるという良い点があります。20世紀のコンクリートに代わり、21世紀は木の時代が再び来たということでしょう。